語る

インターンシップを潜入レポート

リストラする経営者が良い経営者とされつつあるところに終身雇用崩壊の其の意味がある。
株価を上げるためであれば、人員削減することが経営者としての理想であるという規範が広く共有されるようになったとき、日本の「終身雇用」あるいは「長期安定雇用」は崩壊したといえるかもしれない。
先にみたように、定年までの雇用を確保しょうとする企業は今でも多い。
この規範は現在ゆらいでいるが、まだ崩れ去ってはいない。
後者についてはかなりの変化がみられる。
それは、大企業でさえ市場経済のなかでは必ずしも万全の雇用の場ではないという意識である。
資本主義社会であれば当たり前であるこの意識をもたない人はたしかに減少しただろう。
そのため、大企業に入ることよりも「手に職をつける」つまり他社でも通用する職業資格への志向が強まっている。
ただ、第6章で述べるように、企業内での日常的な職業経験こそが職業能力開発の大半を占めるのであり、日常的な仕事をなおざりにして、各種の学校や研修コースで「資格」といわれるものをとっても役にたたない。
仕事との関連性こそが最重要である。
現在の風潮は、「資格」産業ともいうべき産業の宣伝によって、無駄な「資格」が氾濫しているようにみえる。
総じていえば、近年変化したのは、不振企業の多発とそれにともなう個人の自己防衛意識の強まりという、いわばありきたりの変化があるだけで、終身雇用あるいは長期安定雇用そのものが崩壊してしまったということはできない。
ただ、繰り返しになるが、とくに個人の意識変化が今後、いろいろな意味での終身雇用あるいは長期安定雇用を崩すことになるのかどうかはまだわからない。
次に長期安定雇用とならぶ日本的雇用慣行の柱とされる年功賃金についてみてみよう。
年功賃金を廃止して、成果主義賃金を求めるというのが流行である。
巷にはこれに関する本があふれている。
人員構成上中高年が多くなっている大企業ではとくにそれは切実な問題である。
新卒採用を抑えているために、年々従業員の平均年齢が上昇し、その結果、一人あたり労務コストが上昇している。
そのため、定期昇給をゼロベースとし、絶対評価で賃金カーブを寝かせようとしているわけである。
この点については、第5章で詳しく展開することとし、以下では、まず、データの検討を通じて年功賃金の変化についてみる。
ついで、制度的な年功賃金について考え、最後に個人の年功賃金についての意識についてみていくことにしたい。
貸金プロファイルをみるまずよくあげられるのが学歴別賃金プロファイル(賃金カーブともいう)である。
これをみるとどの学歴をみてもフラットになっている。
たとえば、『労働自書』(二〇〇〇年)は、2労働省『賃金構造基本統計調査』により一九八〇年、一九九〇年、一九九九年の男性標準労注:大卒は22歳,高卒は18歳の貸金を100とする。
学校を卒業してすぐに就職した企業で働きつづけているとされる「標準労働者」の年齢別賃金カーブはこの二〇年間でフラットになっている。
一見すると「年功賃金」は徐々にくずれつつあるようにみえる。
しかし、同じ五〇代大卒でも、一九八〇年と一九九九年では人数がまったく違う。
一九五〇年ごろ大学を卒業した者と一九七〇年ごろに大学を卒業した者を、同一カテゴリーとして捉えてよいか疑問が残る。
学歴別にみると大幅に低下する賃金プロファイルも全体としてみると必ずしも低下していないかもしれないのである。
先にみたように、一九八〇年代以降労働移動率はそれほど大きく変化していないので、単純に年齢階級別にみたほうがよいだろう。
実際、男性全体の年齢別の値をみると、様相はかなり異なる(図表4'7)。
全体として、四〇代がフラットになっており、その結果、賃金のピークが四〇代後半から五〇代前半に移っている。
定年延長を反映して、五〇代後半の賃金は上昇傾向にある。
今後、五〇代前半の賃金は相対的に下がるかもしれない。
五〇代後半の賃金の上昇はさらに続くだろう。
こうした推移からみれば、六〇歳定年制という制度変更が、タイムラグをともないつつ賃金水準にも影響を与えていることがわかる。
ここで注目されるのは、成果主義といわれているなかで、三〇代、四〇代の賃金が必ずしも上がっていないことである。
むしろ五〇代前半の賃金が上昇している。
これは一つには五〇代の大卒が増加したことが理由として考えられる。
とはいえ、私としては全体として一九九〇年代を通じていわれていたことと逆の事態がこの間に起こってきたという事実に注目したい。
私の解釈では、こうした事実こそが、企業が声高に成果主義を叫びつづけざるをえない理由なのである。
もし、本当に「成果主義」で中高年の賃金が下がってしまったのであれば、もはやそうしたことを叫ぶ必要はないからである。
中高年の賃金が下がっていないからこそ、企業は成果主義を日常的に叫んでいるのである。
男性についていえば、賃金という観点からみてきびしい状況に陥ったのは、五〇代ではなく、三〇代、四〇代だったのである。
男性と違って、女性の賃金プロファイルは傾斜が緩やかである(図表は省略)。
賃金上昇が三〇代後半までみられるようになった。
高学歴化と勤続年数の長期化がやや進んだ結果であろう。
次に、勤続年数別にみてみよう。
定年延長や従業員の高齢化により、中高年の企業内での供給が多くなり、その結果勤続年数ごとにみた場合、賃金プロファイルは徐々にフラットになっている。
つまり、勤続年数効果は若干低下している。
これは「年功賃金」でいう勤続による効果が低下していることを意味する。
これを「年功賃金」の崩壊というほどの変化といえるかというと、やや疑問である。
ただ、勤続要素の低下、あるいは「年功賃金」の弛緩ということはできるだろう。
全体としてみれば、勤続が二五年以上となると、当初の賃金の約二倍になっているという事実に大きな変化はない。
以上を全体としてみるならば、年功賃金を「年齢別賃金プロファイルが右肩上がりであること」とすれば、年功賃金は基本的に維持されているといってよい。
ただ、年功賃金を勤続による賃金上昇効果とみれば、若干弛緩しているといえる。
さて、年功賃金は能力主義賃金という一面をもっている(7)。
同一企業内で同期入社著聞の賃金のばらつきが小さいことをもって年功賃金として、これが拡大することを成果主義と判断することもある(とはいっても、どの程度が小さいという基準が必ずしもあるわけではない注:勤続年数0年の賃金を100とする。が)。
あるいは、定期昇給制度のあることをもって年功賃金として、その廃止を成果主義化と呼ぶこともある。
制度で判断するか、結果で判断するかによって結果が異なることになりかねない。
制度ならば、定期昇給の廃止の有無とか、昇進・昇格における年齢・勤続要素の実質的排除(なかなかできないが)とかになろうし、結果で判断するとすれば、年齢別や勤続年数別の賃金の形状のフラット化の程度(もちろん技能向上の要素をどう勘案するかという難問がある)、同期入社著聞の賃金のばらつき拡大などとなる。
同期入社著聞の賃金のばらつきについては、明企業によってかなり違う。

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